お菓子工房ノワ(就労B型)

丁寧な接客とおいしいお菓子が人気。
まちで人気のお菓子屋さん「お菓子工房Noix(ノワ)」
(就労継続支援B型事業所)

お店に入るとふわりと甘い香り。
社会福祉法人藻岩この実会 もいわサポートセンター併設の就労継続支援B型事業所 「お菓子工房Noix(ノワ)」は札幌市南区中ノ沢の坂道を登ったところにちょこんとある、かわいらしいお店です。

まめぷろマガジン01号ではNoix(ノワ)さんの活動をご紹介します。

地域の人にも愛されるおいしいお菓子屋さん

製菓、包装、接客…ひとくちに「おかしやさん」といっても作業は様々です。
それぞれの利用者さんの適性や個性を見ながら、ご本人のできることをみつけ役割を振っているとのこと。
実際にはどんな作業が割り振られているのか…と、あの定番の「この実クッキー」のラッピング作業をしているところを見せていただいて、一目で納得。ドレープの美しいこと!仕上がった商品の整然としていること!
「もうこれは彼女に任せるのが一番です」と店長の横井さんが自信を持っておっしゃいます。
横井さんの、利用者さんお一人お一人を見守る眼差しは本当に柔らかく優しくて、それがNoix(ノワ)のおいしいお菓子にも表れているように思いました。

レジ打ちの方もマスク越しでも伝わる素敵な笑顔で接客してくださいます。

商品を覚えるのは大変ではないですか?計算は大変ではないですか?(※ライター担当は暗算が大の苦手)と聞くと、こまめにメモを取り商品の名前や値段を覚えているのだそう。
バックヤードの壁にも張られた細かな字の付箋を見ると一生懸命さが伝わります。こまめなメモのおかげで在庫管理にも一役買っています。

続いて厨房を外から覗かせていただきました。
(コロナ予防や消毒の観点から中に入るのは遠慮させていただきました。)

クリームポンプの手さばきの鮮やかさ、動画でご覧いただけないのが残念です。
ロールケーキの生地も均一にふっくらと焼きあがっています。
オーブンはコンピュータ制御のため難しそうにも思えますが、ゲームに親しんだ若い世代は意外にもなんなく操作ができるそうです。それは障害の区分には関係ないそう。ここでもフラットに一人ひとりの適性を考えているもいわサポートセンターの姿勢を感じます。
今回は、シュークリームの仕上げ作業をされていた磯野聡美さんにお話を伺いました。

<磯野聡美さん インタビュー>

  • ―藻岩この実会でお仕事を始められてどのくらいになりますか?

    サポートセンターが開所されたときからなので、5年くらいです。
    その前は一般企業で働いていました。
    サポートセンターに来て最初のときは清掃班にいましたが、製菓の班に移ってきて、今は計量やクリーム詰めを任されています。

  • ―自慢の商品、お勧めの商品はなんですか?

    クッキーシューです。おいしいです。おすすめ!

  • ―挑戦してみたいお仕事はありますか?

    今は職員さんに点検してもらわないと完成できない。難しい。でも、自分でも点検までできるようになりたい。
    プリンを焼いてみたい!自分で最初から最後までやってみたいけど、オーブンが危ないのでできない。

  • ―休憩のときには何をしてますか?

    音楽を聴いています。演歌や石原裕次郎が好きです。

焼きあがったシューの扱いも手慣れています。

磯野さんありがとうございました!磯野さんのプリン、できたら絶対に買いに来ます!

また利用者さんと一緒にパンを作る日を願って。
旧道defi(デフィ)の名物パン

「Noix(ノワ)」ではパンも小売りしています(※旧道ベーカリーdefi(デフィ)は現在閉鎖中)。
利用者さんは今いないけれど、パンを待ってくださるお客様のために、一人でパンを焼いてくださっているのは職員の石井さんです。
8:30-17:30の勤務で15種類のパンを焼いています。
利用者さんがいたときは一緒に作業をし、調子を見ながら時にはカバーしていたそうです。
また、取材をさせていただいた日はそこそこ暑く、オーブン前の作業は楽ではないことは想像に難くありませんでした。にも拘わらず爽やかな笑顔でインタビューを受けてくださった石井さん。夏は気温・室温にパンの出来が左右されるため、管理と記録が大切だと仰っていました。感覚ではなく、正確な管理。それこそがこのおいしいパンを提供する最大の企業努力なのですね。
ちなみに石井さんおススメは「塩パン」だそうです。

施設管理者石井さんにも聞きました!
「もいわサポートセンター」は開所して5年の就労支援B型の施設です。利用者さん28名、職員さん13名で清掃や農作業、お菓子工房などの班に分かれて作業をしています。
立ち上げから携わっている石井敏三さんにお話を伺いました。

就労支援施設の1日
8:00 出勤…送迎車や徒歩、バスなどでサポートセンターまで出勤。
医務室で日直さんが検温。
8:30 職員打ち合わせ・各作業班の打ち合わせ
9:00 作業開始…開店準備、お掃除、在庫チェックなど自分でできることを行う。
10:00 Noix(ノワ)開店
11:15 午前中のお仕事終了。休憩に入ります。
13:00 午後の作業開始

就労支援施設なので目指すは一般就労。なので、「働く」ことを教えてはいますが、あくまでも清掃やお菓子作り、接客などの作業は「手段」であって「目的」ではありません、と石井さん。ここは社会に出るための勉強の場、経験を通じて、社会性やコミュニケーション能力を身に着けていってほしい。
それを教える、「心を育てる」ことが、我々職員の仕事だと思っています、とおっしゃっていました。

もいわサポートセンターの支援で大切にしていることは「未来像を描く」ということ。
日々接していると目の前の事象のみにとらわれがちですが、この方の5年後10年後はどうなのか、どうなっててほしいのかを考えないと場当たり的な支援になってしまう。利用者さん一人ひとりの人生にとって「何が幸せか」を考えていきたい、と教えてくださいました。

職員がその思いで、利用者さん一人ひとりの様子をみてその日の支援を整えていることは、取材をさせていただいたほんの短い時間でも感じ取ることができたように思います。
また、家庭との連絡ノートも大切な情報源。全員のご家庭との交換日記のような密なやり取りが、利用者さんの小さな変化も見逃さずに支援できる秘訣なんですね。

コロナ襲来!その時施設は…

  • ―コロナでの非常事態宣言、自粛生活、それは支援活動に影響をおよぼしたのでしょうか。

    最低限の消毒、時差出勤、はしていましたが、お店もやっていますし、小学校の清掃など請負でやっている仕事もあったので
    「正しく恐がりましょう」ということを念頭に、やるべきことをやって、それでもかかってしまったらもうしょうがないと思っていました。あの状況で絶対かからないというのは無理ですし。皆さんご家庭があって個々人の生活がある。隔離はできない。その中で考えなくてはならないと思っています。
    お仕事を請け負ったのにコロナが怖いので行きません、では通らないので、食べる前には手を洗いましょう、消毒しましょう、を徹底してチェックする体制をとっていました。

  • ―お店も構えていらっしゃいますがお店を休業しようかなということは考えました?

    あり得るとは思います。ただ、職員体制も穴が開かないよう、もしかかってしまった職員がいて14日間休まなくてはならなくても、仕事の維持ができる体制は作っていました。
    何より通わなくてはだめな方、調子が崩れてしまう方もいらっしゃるのでそのことを第一に考えましたね。
    もし施設が閉鎖になったとしても、その方がかかっていないのなら受けいれしなくてはならない状況は続くので。
    さらに、必要な方については家庭訪問を組んだりもして対応していました。とにかく、彼らの心の中に負の情報が蓄積されて調子が崩れないことを大切にしていました。

  • ―では、コロナ禍でお仕事が逆に増えた感じですか?

    まあ…でももともとのうちのやり方なので。これが正しいかどうかはわからないですけど、利用契約を結んでいるので本人を支援するのは当然なんですが、成長させたいという目的でここでいろんな仕事をやってるわけなので、本人とその取り巻く環境すべてが支援の範囲だととらえています。だからこそ、コロナ禍になったからって何か特別なことをするということはないですね。
    逆に、慌てずとも最低限の消毒などの対策さえすればやっていけるという自信がありました。
    もちろん、利用者職員併せて40名以上が一度に集まっているのにもっと感染対策をしなくてもいいのかというお声もいただきましたが、そこは両立させてないとダメかなと思っているので、先ほども言った「正しく恐がる」が大切なのかなと。
    防災にしたってそうですよね。普段から備えておけば。

  • ―なるほど。我々一般企業にも通じる話ですね。

    ありがとうございました。

【編集後記】

 まだ形になっていない中、WEBマガジンの取材を快く引き受けてくださった「もいわサポートセンター」様、ありがとうございました。
 取材をしていて、利用者さんの笑顔にたくさん触れることができ、お菓子よりも甘い気持ちになりました。新卒で入ってこられる利用者さんも多いそうですが、まだまだ若くみずみずしい方々の「心を育てたい」という思いが伝わっているのですね。
 プライベートでもまた、お菓子を買いに行きたいと思います!マガジンをお読みくださった皆様、ほんとーにおススメですよ!

【施設情報】

もいわサポートセンター お菓子工房Noix(ノワ)
アクセス:札幌市南区中ノ沢1丁目11番11号
オープン時間:10:00-17:00

HP
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