技能五輪北海道大会予選・造園職種──若き匠たちのまっすぐな成長を見つめて
春を待つ岩見沢農業高等学校で、
今年も若き造園技術者たちが技能を競い合いました。
このまめぷろマガジンでも、造園の取材を続けて今年で5年目。すっかりこの世界に魅了され、選手たちの成長を毎年楽しみに見守っています。
今回の北海道大会予選に出場したのは、岩見沢農業高等学校で学ぶ3名の生徒たち。 3年生が2名、2年生が1名。どの選手も、これまでの努力を胸に、真剣な眼差しで大会に臨んでいました。
特に、3年生のひとりは、前回の全国大会にも出場経験があり、すでに東京への就職も決まっているそうです。
インターンシップにも積極的に取り組み、今はさらに高みを目指して、2028年の世界大会にも照準を合わせながら技術を磨いています。
今回の課題は、これまでとは大きく様変わり。より全国大会を意識した、実践的な内容に変更されました。 運営側の工夫や試行錯誤からも、若い技術者を本気で育てようという熱意がひしひしと伝わってきます。 競技開始の合図とともに、会場は静かな緊張感に包まれました。
今回のハイライトの一つである「野面積み」は、自然石をそのままの形で積み上げる技術で、ただ積めばいいのではありません。石の面合わせや水平感覚、そして何より、見た目の美しさ──芸術性も問われる繊細な作業です。
▲整然と並ぶ道具 | ▲チェックは欠かせません |
岩見沢農業高等学校環境造園科の山口教諭は、競技が始まる前にこんなふうに語ってくれました。
「我々教師は、道筋をつけただけ。造園は自然物が相手ですから、その都度向き合い方が変わってきます。 今回の選手たちは、石を見ただけで頭の中にデザインが浮かぶ力が身についてきました。納得できなければ、積み上げたものを崩してやり直す根性もある。楽しみな生徒たちです。」
▲設計図を確認 |
その言葉通り、選手たちの手際は本当に見事でした。
一つ一つ石を手に取り、迷うことなく面を合わせて積み上げていきます。動きに無駄がなく、作業開始からわずか30分あまりで、基礎となる構造を完成させた時には、思わず拍手したくなる気持ちになりました。
▲完成 |
競技時間は3時間半。 長く感じるこの時間も、彼らにとっては一瞬だったかもしれません。 真剣に課題に向き合い、時には積み上げたものを壊し、また最初から丁寧に積み直す。そんな粘り強さに、胸がいっぱいになります。
そして迎えた表彰式と講評。 審査員を代表して講評に立った鈴木社長の「この場に立っているということは、皆さんはすでに“超高校級”の腕前です。それを誇りに思ってください」という力強い言葉に、選手たちの顔にもふっと笑顔が浮かびました。 その上で鈴木社長は続けます。
「無駄な動きの積み重ねが、わずかな時間ロスを生み、焦り、仕上がりの差になります。冷静に、時間を意識して動くこと。これがいい仕事につながる鍵です」 具体的で実践的なアドバイスに、選手たちは真剣な表情でうなずいていました。
技術だけではなく、精神面の成長も求められる。そんな厳しくも温かいメッセージを、彼らはしっかりと受け止めていました。
▲アドバイスをする方も受ける方も真剣 |
この3名の中から、全国大会への推薦者が選ばれる予定です。 誰が選ばれてもおかしくない、素晴らしい戦いでした。
▲賞状授与 |
5年前、初めてこの造園の世界に触れた時、正直私は、こんなにも若い人たちが、自然と向き合いながら真剣にものづくりに打ち込む姿に、これほど心を動かされるとは思っていませんでした。
今では、取材するたびに「がんばれ、がんばれ」と胸の中で何度もエールを送りながら、成長を見守ることが私の楽しみになっています。
これからも、彼らのまっすぐな歩みを、温かく、そして少しだけ誇らしい気持ちで応援していきたいと思います。 この岩見沢から、また新たな未来の匠たちが羽ばたいていく──そんな確かな手応えを感じた一日でした。